▼書籍のご案内-序文

針灸弁証論治の進め方

原著まえがき

 針灸学は中国伝統医学の宝庫の中の重要な一分野であり,炎黄の子孫が数千年にわたる疾病との闘争によって獲得した知慧の結晶である。長期にわたって中国人民の繁栄隆盛と保健事業にとって卓越した貢献をなしてきた。科学が飛躍的に発展した今日において,針灸医学は国内外の有識者の益々重視するところとなり,針灸の学習,研究および応用にたいする熱意は益々盛んになってきている。近年来,多数の針灸関係者の勤勉な努力を通じて,旧態依然であった古医学は生気を放つようになり,多大な喜ぶべき成果を収めている。
 針灸の学術を発展させ,中医学の特色を維持するために,編者は長年にわたって教学と医療実践,特に南京中医薬大学国際針灸養成センターにおける講義と臨床指導を行ってきたが,その経験から,針灸の臨床と研究においては,中医弁証施治の診療体系を堅持し,処方配穴の論理性と実践性を強調し,治療手技を重視する必要性を確信するにいたった。この認識に鑑みて,ここに『針灸弁証論治の進め方』(原著名:『常見病症的針灸弁証施治』)一書を編纂した。本書の編集にあたっては,全国の各種針灸教材の長所を踏まえ,先哲の経験の結実を取り入れつつ,理解するに容易で,簡にして要を得,実情に適合したものにすることに力点をおき,あわせて外国人学習者にとって興味ある問題や針灸臨床における疑問点に対しても要点を押さえて論述した。学習者には本書が示すところの,理論を通じて理解し,治法を通じて運用し,処方を通じてその意味を考察し,取穴を通じて臨床の実際の手掛かりとされることを期待する。
 本書は内科,産婦人科,外科,小児科,感覚器科などにおける常見病,合計58病症の弁証論治を論述したものである。各病症についてそれぞれ,概念,病因病機とその弁証施治について系統的に解説をすすめ,あわせて症例を選んで挙げ,読者の臨床実例への対処の便宜を図った。本書を通じて針灸学の知識を確たるものに深め,分析と解決の能力を養い,診療水準を高めていただきたい。
 本書は中国語,英語の2カ国語で出版され,国内外の多数の医療従事者および中医学に関心を寄せる読者の学習の参考に供している。
 編集に要する時間的制約や知識不足からくる内容の不十分な点については読者の批判と訂正を乞うものである。

編 者
南京中医薬大学
1987年5月