▼書籍のご案内-序文

【中医臨床文庫1】風火痰瘀論

日本語版序文

 拙著『風火痰オ論』は1986年,北京において,人民衛生出版社より出版されました。出版後,全国の中医学界から好評を得たことから,同出版社は本書を日本の出版社に推薦し,日本語版出版の運びとなりました。筆者はこれを光栄に思い,日本語版の出版を心待ちにしていた次第です。
 中国医学は日本の医学界と古くから関わりを持っております。いまを遡ること西暦6世紀,中国の漢・唐代を境に,両国の医学界は頻繁に往来するようになり,中国医学は徐々に日本に浸透して行きました。唐代の鑑真が扶桑(日本の別称)に渡り医学を伝えたことも,両国間の交流の1つの証といえます。中国医学は日本で「漢方医学」と呼ばれながら,日本の医学の一翼を担ってきたのです。
 中国の金元代(1115~1368年)の偉大な医学者・朱丹渓の理論は,15世紀に日本に伝えられ,安土桃山時代(1568~1594年),江戸時代(1600~1867年)に最盛期を迎えました。なかでも,田代三喜(1465~1537年)に師事して大陸医学を学んだ曲直瀬道三は,医学教育にも力を入れ,丹渓学説の普及に貢献しました。
 丹渓学説を貫く中心命題は「風・火・痰・オ」です。筆者は長年丹渓学説を学び,臨床に取り入れ応用して参りました。本書はその経験の集大成といえます。本書の日本語版出版により,日中の医学界の交流が深まり,丹渓学説がさらに日本で理解され,浸透することを切に願っています。日中両国の友好と学術交流がこれからも永遠に続くことを願い,私の序文といたします。

章  真 如
1997年(丁丑)春月
中国武漢市中医病院にて