▼書籍のご案内-序文

漢方方剤ハンドブック

序文

 胡先生がこのたび,東洋学術出版社より,『漢方方剤ハンドブック』を出版されることになりました。本書は,東京中医学研究会での講義を下敷きにしてまとめられたものです。私は15年にわたって先生の講義を聴講し,御指導をいただいてきましたので,多少なりとも先生のお人柄や勉強に対する態度について述べることが,本書を読もうとされる方への予備知識になるのではないかと思い,拙文を顧みず,一筆啓上することにいたしました。
 東京中医学研究会は,昭和52年頃,豊島区長崎の医師・薬剤師の有志10名ほどが集まって,医師の黄志良先生を囲んで寺子屋式で針灸の勉強会を始めたのがそもそもの始まりです。当時は,漢方薬82処方が保険薬として認められて,1年目の頃ではないかと思います。私は日本漢方や中医学の勉強会をとび廻っておりましたが,系統だった勉強会はありませんでした。55年,黄先生の針灸学講義の最終回に,漢方82処方の中医学的概要の講義をお聞きしました。その後,昭和57年にツムラ順天堂(株)の紹介によって,胡先生とめぐり会うことができ,それ以来,先生の中医学講習会は今日に到っております。今日では,医師,薬剤師が常時20名以上出席する勉強会を催しています。
 胡先生は講義開始30分前頃には会場に来られて,会員の色々の相談に応じて下さいます。会員自身の健康は勿論,会員の患者についても御指示いただき,これは非常に助かります。なんと申しましても,どの疾患に対しても即座に方剤なり,生薬処方が解答される知識の深さ,応用力の柔軟さには驚くばかりです。先生の講義態度は実に真面目で,講義の内容も相当の時間をかけて準備されるそうです。内容は誠に有意義で豊富な内容です。教わっている者をぐいぐいと引きつける充分な力を感じます。私自身,胡先生の講義を聞いてはじめて,漢方はよく効くものだなあと実感するようになりましたし,漢方を使う楽しみを味わった気がいたします。講義時間も実に正確に終了されます。これも講義の準備が周到であること,不十分な終わり方をさけようとされる先生の真剣な態度のあらわれといえるでしょう。
 今回出版されます本書は効能にしたがって大分類,中分類と分け方剤名をわかりやすく解説されております。したがって,どんな病気にどの方剤を使用すべきか,一目で判断できるようになっています。臨床に応用し日常の診療にすぐに役立つことと思います。
 この機会をかりて東京中医学研究会で長期にわたり御指導いただいておりますことを深く感謝申し上げます。

東京中医学研究会元会長
永谷義文・遠藤延三郎
平成8年秋