▼書籍のご案内-後書き

写真でみる脳血管障害の針灸治療

あとがき

 脳血管障害に対する針灸治療に初めてのシステム化がなされた。それが本書にて紹介した「醒脳開竅法」である。この治療法は,脳血管障害に対する積極的治療法であり,発症直後からこの治療法を採用すると,死亡率の低下,ADLの向上,合併症の治療等に有効である。また,慢性期の治療にも応用することができる。この画期的な治療法は,1987年11月に北京で開催された世界針灸連合学会で初めて発表され, 多数の参加国の代表から特に注目をあび高い評価が与えられた。とかく脳血管障害に対する針灸治療は,後遺症期の症状改善に適しているとされてきたが,本治療法の開発により針灸治療は,脳血管障害治療の最前線に登場することとなった。
 「醒脳開竅法」は,その治療におけるシステム化がはかられたことにより,多くの針灸師が実践できるものとなっている。開発者の石学敏教授がいつも言われていることであるが,針灸においてはその治療効果に再現性をもたせることが必要である。それはまた臨床サイドにおける針灸の科学化につながるものである。本治療法は,約3000症例にわたってその治療効果の再現性を実証している。
 ところで,この治療システムのなかには,手技も含まれている。針灸においては正確な証の決定(診断)とそれにもとづく処方の決定が重要であるが,さらに治療効果を決定づける重要な要素として手技の問題がある。ここでは付録1として「基本補瀉手技」を紹介しておいた。この基本補瀉手技は,どの疾患の治療にも応用することができる。
 また付録2として「醒脳開竅法に用いる経穴と刺針技術」を紹介しておいた。これは天津中医学院付属第1医院の王崇秀助教授が,医療法人財団仁医会牧田総合病院で行った「醒脳開竅法」の技術指導内容を,学校法人後藤学園講師である似田敦氏が整理したものである。多くの臨床的ノウハウが,この付録ではうまく整理されているので,実際の臨床に活用していただきたい。
 針灸療法は現代医学,リハビリテーション医学等との連携により,今後いっそう重要な医療的役割を担うものと思われる。とくにここで紹介した「醒脳開竅法」は,これらの分野との協力が必要であり,そうすることによりQOLのいっそうの拡大が可能となり,本治療法もその真価を発揮することができるのである。多くの針灸師がここで紹介した補瀉手技に熟練し,この治療システムを活用されんことを心より期待する。

学校法人 後藤学園中医学研究室長
兵 頭 明