▼書籍のご案内-後書き

中国刺絡鍼法

あとがき

 日本刺絡学会の運営委員会で『中国刺絡療法』(原書名:『実用中国刺血療法』)を翻訳しようと発意されたのは、もう7,8年前になる。そのころに中国で出版された数冊の刺絡鍼法に関する本を検討して、基礎的な理論と臨床の実際、関連する問題についての論文などが配されていて、日本の刺絡鍼法の発展のために役に立つと考えられたからである。東洋学術出版杜の山本勝曠社長と翻訳担当を引き受けてくれた植地博子さんとで相談して、出版することにした。ところが、出版杜の中国の科学技術文献出版社重慶分社に翻訳の許可を申し込んでもナシのつぶてで、いつまでたっても返事が来ない。
 ようやく再度、翻訳しようとの機運が起こって来たのは6年前,「日本の刺絡学術を再興するためには、鍼灸師のための刺絡鍼去マニュアルが必要である」となり、日本刺絡学会で『刺絡鍼法マニュアル』をまとめようと決定してからである。日本の刺絡の学術と中国の刺絡の学術とがどのように異なっているのかを明らかにすることによって、日本ではどのような刺絡鍼法の発展があったのかを明らかにすることができる。そしてまた刺絡鍼法をどのような方向に発展させるべきかを考えるためには,中国の刺絡鍼去に関する実情を知る必要がある、と運営委員が認識したからである。再び、中国刺絡鍼法を我が国の鍼灸師の方たちに知らせるための努力が始まった。『中国実用刺血療法』翻訳委員会が設けられた。当初に予定していた植地博子さんが多忙になったために翻訳を担当することが無理となった。そこで、中国に10数年暮らし、北京中医学院で中国鍼灸を学んで、神奈川県リハビリセンターで鍼灸臨床を担当している徳地順子さんと,新進鍼灸家の関 信之さん、島田隆司、それに後藤学園で鍼灸教育に従事している島田 力の4人で分担して翻訳作業を開始したのが平成6年5月である。月に1~2回集まって、担当した部分の翻訳文を提示し、翻訳上の問題点を出し合い、検討し、再度翻訳し直し、それをワープロに打ち込み、という作業を2年ほど経て、平成8年春には第1次の翻訳文を作成した。途中で翻訳メンバーが不足していることに気がつき,関西鍼灸短期大学王財源氏や東洋学術出版社に応援を求めて高橋氏と渡辺氏に加わっていただいた。翻訳上で特に問題になったのは中国での病名が現代医学的に通用しにくいこと、日本での疾病分類と中国での分類との間の異同、中国での弁証名をどのように翻訳するか、などであった。
分担して翻訳したための用語の違いを統一し、日本語らしい文章に修正し、翻訳委員がそれぞれワープロに入力したものを西岡敏子事務局長がまとめて入力し、大貫 進・石原克巳氏ら日本刺絡学会運営委昌会の主要なメンバーに目を通していただき、さらに全体の校正を数回に渉って河島さんにお願いして、という手続きを経て、ようやくこのほど出版の運びとなった。
 随分と年月がかかってしまったが、この中国刺絡鍼法が日本の刺絡鍼法の発展のために十分に活用されることを願って、後書きとする次第である。本書の発行のために随分と勝手な言い分を聞いて戴き、出版にまでこぎつけて下さった東洋学術出版杜の山本勝曠社長には深く感謝申し上げる次第である。