▼書籍のご案内-後書き

[原文]傷寒雑病論(三訂版)

第三版あとがき

 本書の初版は、日本漢方協会が創立十周年を記念して上梓したものである。
 日本漢方協会は、正しい漢方知識の教育と普及を目的として、当代漢方医薬界の指導的諸先生のご援助を得て、これまで延べ数千名の受講者を対象として漢方特別講座および同通信教育講座を開催し、斯界に貢献してきている。
 日本の漢方の支柱をなしている古典は、『傷寒論』と『金匱要略』の二書で、この両者を研修せずには漢方を学んだとはいわれないほどである。これら古典は二千年近く前のものであるので、原典は散佚してしまっている。そこで本書を編集するにあたっては、後世の中国で撰次された数種の伝本テキストの中から、最も信頼のおけるとされるものを採用し、二書を合して一冊とした。
 第二版は、初版では省略されていた条文や細注を追加し、誤植を訂正するとともに全篇に条文番号を附した。特に『金匱要略』は、初版の底本(『古今医統正脈全書』に基づく人民衛生出版社版)と第二版の底本は異なっているので、一部に語句の違いがある。
 さらに第三版では省略されていた刻仲景全書序・進呈箚子及び第五篇以下各篇の初めにある一字下げ子目の方剤の部分を追加した。字体は基本的に旧漢字を使用し、できるかぎり底本に近いものとした。
〔採用原典〕
 『傷寒論』… 底本は趙開美版(明・万暦二十七年〔一五九九〕序)とし、句読点は宋成無己注・明汪済川校の人民衛生出版社『注解傷寒論』を参考とした。条文番号(漢数字)は、趙開美版を底本とする上海中医学院中医基礎理論教研室校注の『傷寒論』及び南京中医学院傷寒教研組編著の『傷寒論訳釈(上下)』を基礎とし、更に各篇毎の番号(アラビア数字)も附した。
 『金匱要略』… 先年当協会で影印した趙開美版を底本としたが、条文番号を附すため改行した所が少なくない。条文番号(アラビア数字)については、譚日強編著の『金匱要略浅述』(人民衛生出版社)を参考としたが、附方についても番号を附した。また細部については、成都中医学院主編の『金匱要略選読』を参考とした。
 なお、〔 〕は、処方検索を容易にするため附加したものである。傍線(――)は、底本にはないが補った部分であり、傍点(○)は誤字を訂正したことを示す。

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平成十一年十二月吉日